妊婦体重増加の目安が引き上げに
2021年3月6日、日本産婦人科学会は、妊婦の体重増加について新たな指標を公表しました。
従来の指標では、2006年に策定された厚生労働省による「妊産婦のための食生活指針(健やか親子21)」が目安となっていました。
日本産婦人科学会は2015年~2017年の出産データをもとに、妊婦の体重や妊娠週数、出生体重などを分析した結果、妊婦の体重増加の目安を見直すこととなったようです。
体格区分 | BMI | (旧)推奨体重増加量 | (新)推奨体重増加量 |
低体重(やせ) | 18.5未満 | 9~12kg | 12~15kg |
普通 | 18.5以上25.0未満 | 7~12kg | 10~13kg |
肥満 | 25.0以上30.0未満 | 個別対応 | 7~10kg |
ー | 30.0以上 | 個別対応 | 個別対応(~5kg) |
BMI30.0以上の場合を除いた全ての体格区分において、従来の指標よりも体重増加を推奨しています。BMIが18.5未満の痩せ区分や、18.5以上25.0未満の普通区分では、従来の基準よりも3kgの増加となりました。
今回公表された新たな指標を基に、今後、厚生労働省は指針を改定する予定です。そうなると、母子手帳の記載も見直されるでしょう。
体重増加目安の見直しが検討される要因となったのは、低出生体重児の増加です。次項以降では、低出生体重児について詳しく解説していきます。
低出生体重児の増加
体重増加指標の見直しの要因となった、低出生体重児の増加について、詳しく見ていきましょう。
低出生体重児とは
低出生体重児とは、体重が2500g未満で生まれた赤ちゃんを指します。さらに低出生体重児の中でも、1500g未満を極低出生体重児、1000g未満を超低出生体重児と呼びます。
出生体重 | 出生児の分類 |
4000g以上 | 高出生体重児 |
2500g以上4000g未満 | 正出生体重児 |
2500g未満 | 低出生体重児 |
1500g未満 | 極低出生体重児 |
1000g未満 | 超低出生体重児 |
低出生体重児が40年間で1.8倍も増加
上のグラフは、日本における低出生体重児の割合を示しています。(厚生労働省:人口動態統計の数値を参照)
低出生体重児の割合は、1980年頃から増加傾向にあります。1980年(昭和55年)には5.2%でしたが、2015年(平成27年)には9.5%にも上昇しており、約40年間で1.8倍も増加していることになります。
出生体重を世界的に見ると、その国の経済状況を反映すると言われています。
つまり、発展途上国では出生体重が低く(低出生体重児の割合が多い)、先進国では出生体重が高い(低出生体重児の割合が少ない)ということです。
日本は経済的にも安定しており、栄養環境にも恵まれているにも関わらず、低出生体重児の割合が高いという現状は、世界的に見ても非常に珍しい国と言えます。
低出生体重児増加の要因とは?
低出生体重児が生まれる要因としては、様々な理由が考えられます。例えば、妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剥離、羊水過多症、羊水過少症、妊娠中の喫煙などが要因となることがあります。
様々な要因がある中で、低出生体重児の増加の要因の一つとして、若い女性の瘦せ傾向が影響していると考えられます。
上のグラフは、日本における20~29歳の女性及び30~39歳の女性の平均BMIの推移を示しています。(国立健康・栄養研究所:国民健康・栄養調査の数値を参照)
1970年前後から若い女性のBMIは低下傾向にあり、近年の女性は瘦せ傾向にあると言えます。これは、痩せ願望や美容目的から、体型を気にする女性が増えたことが背景にあると考えられます。
このように、若い女性の瘦せ傾向によって低出生体重児が増加傾向にあるため、妊婦の体重増加目安の見直しが行われました。
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